逝きし世の面影 読書ノート

 
<6 労働と身体>
 
近代工業の確立、軍隊的な労働規律として結晶する計測された時間とひきかえの労働
 
時間の9/10は歌を歌うのに費やされる   -   地曳き網
 
 
時間の感覚  悠長さ  ことを急ぐ必要がない  また使えればそれでよい
 
 
(ペリーは)いらいらした不作法な人間だった
 
大人がひとり暮らすのに、都会なら2円75銭(14フラン)、田舎なら20円(100フラン)あればよかった。
 
彼らはなんら不幸ではない…マンチェスターの工場でどうにか生活の糧を得たり、ロンドンのみすぼらしい蝋燭のもとで過ごしている過労のため疲れきった労働者より百倍も望ましい
 
 
1960年代からの近代化論では、徳川期に石門心学などによって民衆のうちに勤勉のエートスが確立され、農民が勤労の意味を知ったことが、明治期での近代化の成功の基盤となったとされるが…労働の容態がイリイチのいうコンビビアルな共生の表現であった…このような労働の原質を奪い取られ、近代的労働として業火のなかで鍛え直さればならなかった
 
山形市…"商人たち"が40-60キロを背負って登ってくる
 
 
かれらの身のこなしは歩いているのか走っているのか見分けのつかない態のもので…しめつけられた胸の奥からしごとの歌を口ずさむ。あえぎなから歌う歌は、左足が地面につくとき、右足が大股に踏み出すちからを奮い立たせる。
 
…さいしょは人の引く車にのるのに罪悪感をおぼえた。だがなにしろ乗り心地がよく、車夫が快活なので  後悔の念は去り、楽しみが残る  車夫たちは貧乏ではない、車を引くのは社会的な地位…
 
上層、下層の身体的ちがいは顕著。
 
江戸の労働大衆は、自由な体を持っていたのだ。なぜ彼らのからだは自由だったのか?
身分社会の構造へと導かれる。
 
 
 
<7 自由と身体>
 
個人が共同体のために犠牲になる日本で、各人がまったく幸福で満足しているようにみえるのは驚き
 
人はたえざる監督の結果、抑圧され疑い深くなったとすべきなのに、まったく反対に明朗活発、開放的な人が見られる
 
日本は専制政治にたいして世界最良の弁明を提供している。
政府は全知であり、結果強力で安定している。その束縛は絶対でありひとしくあらゆる面を圧している。そして社会はほの存在をほとんど意識していない。
 
上層と下層民の隔たりは著しい。
ほとんど相互の関係をもたない。
上からの影響が及ぶことは、稀だった。
下層の権利を、上層は尊重する。
(土地の)強制収用法は存在しなかった。
騒ぎを収めることもしない。
 
共同体の自治権を剥奪して、近代統一国家権力として自立する以降である(けんかが事件とされるのは)
 
国政レベルで集権的権力をふるった(年貢、一揆の禁止、キリシタンの禁圧)
民衆の生活レベルでは干渉しない、自治領域
ヨーロッパの中世、近世の専制政治に似通っている
 
まだとし若い男が、大名や老中とまるで同僚と話すように気楽に会話する
青少年に地位と年齢を貴ぶことが教えられるのと同時に、自己の尊厳を主張することも教えられる